最近は政府の努力もあって、上場株式を購入する際に「一般NISA(以下NISAと記載)」を利用する人が増えてきました。NISAとは年間120万円までの上場株式等を購入した場合に、配当や譲渡益を最長5年間、非課税とする制度であり、小額投資非課税制度とも呼ばれています。

以上がNISAの教科書的な説明になるのですが、確かに素晴らしい制度ではあるものの、個人的にはNISAのメリットばかりが強調されて伝えられているように思いますので、ここでは少し「デメリット」もご紹介しておきます。

確かにNISAで購入した上場株式が値上がりして、売却できた場合は譲渡益に係る税金は非課税となります。

ではNISAで購入した上場株式が値下がりしてしまい、その後に売却した場合はどうなるのでしょうか?

実はNISAで保有していた上場株式に譲渡損が発生した場合は、他の上場株式の売却益と損益通算できないのです。株式投資を行っている方はわかると思いますが、これはとても大きなデメリットとなります。

つまりNISAという制度は、譲渡益が非課税になる制度というよりも、税務署が上場株式の買値をわざと把握しないという制度であると言えます。どういう意味かと言うと、税務署はNISAでの個別銘柄の買値をわざと把握しないのだから、売却時に譲渡益が出たのか譲渡損が出たのかわからないため、結果としてその銘柄を売却しても譲渡益に課税できないというスタンスを取っているのだと思われます。

しかしそうなると、当然ながら譲渡損が出た場合にも、税務署は買値を把握してくれないのですから、損失額を認識してくれません。このあたりの仕組みは特定口座とは真逆の設計となっています。

さてここからが本題ですが、ではNISAで上場株式を購入していた方が死亡した場合、NISAで購入された上場株式はどのように取り扱われるのでしょうか?

実は被相続人が死亡した日に、相続人がその上場株式を相続したとみなして、被相続人のNISA口座から上場株式が払いだされ、「死亡日の終値」で相続人が取得したことになります。

これを「みなし譲渡」と呼んでいますがNISAでは買値を把握しないのですから、このような措置になるのも仕方ありません。そしてその上場株式は、相続人のNISA口座に入庫することはできません。つまり相続人は自らのNISA枠で、被相続人のNISAでの買値を引き継げるわけではないのです。

以前に当コラムでもご紹介しましたが、特定口座や一般口座で購入された上場株式は、相続人が被相続人の取得価格を引き継ぐのとは大きな違いがあります。

これによってどのような事が起こるかというと、被相続人がNISAで保有していた上場株式が値上がりしていた場合は、相続人は死亡日の終値で購入したのと同じなので、結果的に含み益分は非課税となったまま相続人が相続できることになります。

しかし値下がりしていた場合も死亡日の終値で購入したことになるので、相続人がすぐに売却した場合でも譲渡損は認識してくれませんし、今後その銘柄が上昇して売却した際には、被相続人がもともと取得していた価格よりも低くなっていることから、譲渡益税を多く取られることになるため、相続人は損をすることになるのです。

それら諸々を考慮すると、結局のところNISAで上場株式を購入する場合は「値上がりする」ものを購入しないと特定口座で購入した場合と比較した場合には大損になります。

そうであるとするならば、やはり中長期的に成長力のある企業の株式をNISAで購入し長期保有するのが、NISAの使い方としては最善となるため、政府のNISA設計思想である「家計の安定的な資産形成の支援と経済成長に必要な資金供給の拡大を図る」という目的がきっちり反映された制度ということになるのかもしれません。なかなかよく考えられている(というよりかなりの深謀遠慮な?)制度ですね。

※監修 廣田証券 https://www.hirota-sec.co.jp