上場株式を保有していると、1年に1~2回くらい「配当金」をもらえることがあります。配当とは、会社が稼いだ利益の一部を株主に還元する行為のことであり、一般的には金銭で支払われます(サービスや物品で還元する場合は株主優待と呼ばれます)。定期的に高額の配当を行っている企業は、業績が安定している場合が多いため、インカムゲインに重点を置く投資家から見ると魅力的に映ります。

ところで上場株式の配当金は以下のように「4種類」の受取方法があります。

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➀ 株式数比例配分方式

② 登録配当金受領口座方式

➂ 個別銘柄指定方式

④ 配当金領収証方式

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まず①ですが、これは国内の上場株式、国内ETF(イーティーエフ)、国内上場REIT(リート)等の配当のすべてについて証券会社で受け取る方法です。証券会社で特定口座を開設して、その中で配当金を受け取る形にすると譲渡損などと損益通算が可能になります。現在主流となっている配当金受取方法ですね。

次に②ですが国内の上場株式、国内ETF(イーティーエフ)、国内上場REIT(リート)等の配当金のすべてについて、指定した銀行口座で受け取る方法です。

次に③ですが証券会社ごと、保有銘柄ごとに配当を受け取る銀行口座を投資家が指定する方法です。

最後に④ですが株式の発行会社や信託銀行から郵送される「配当金領収証」を、ゆうちょ銀行または指定金融機関の窓口に持参して換金する方法です。この受取方法は株主が①②③のどれも選択していない場合に、自動的に選択されることになります。

これらのうち③の方法は、保有する上場株式が売買によって変化するごとに銀行口座を登録することになるため、手間がかかることからあまり選択されることはありません。また②の受取方法はたまに選択されるようですが、特定口座での配当金の損益通算ができないため、現状では一番選択されているのが①の株式数比例配分方式です。

ところで・・・・相続が発生したときに是非とも注意しておきたいのは、被相続人の保有する上場株式の配当金が、④の形式で送られてきた場合です。

先にも書きましたが④の形式は①②③が選択されていない場合に自動的に選択されるのですが、実は④になってしまったという原因の多くが「①の株式数比例配分方式を選択できなかったため」という場合に該当します。

ではなぜ被相続人は①を選択できなかったのでしょうか?その原因の中でもとりわけ多い理由は「被相続人が“特別口座(特定口座とは別物です)”で保有している上場株式があるから」というものです。

特別口座とは2009年に株券が電子化された際に、株式の権利を保全するために信託銀行に強制的に開設された口座のことですが、この口座が存在していると証券会社で①を選択することができないのです。

未だにご自宅に保管されている上場株式の「紙の株券」などは、ほとんどの場合は特別口座に残高が反映されているはずです(特に単元未満株が特別口座に存在する場合が多い)。

もちろんですが、特別口座内にある上場株式は信託銀行が保管していることから、被相続人が取引していた証券会社の預かり明細には掲載されません。

つまり被相続人の上場株式の相続手続きをする場合、手続きのプロである税理士や司法書士であっても、証券会社の預かり残高のみを調べて手続きを進めてしまい、信託銀行の預かり残高にまで気がつかないケースが結構あるのです。そうなると特別口座の残高が相続財産リストから漏れてしまい、相続税の計算に影響を与える場合も考えられます。

相続人の方は、相続手続きの最中に、被相続人が④の形式で配当金を受け取っている形跡を見つけた場合には、是非とも特別口座に上場株式が存在する可能性を疑ってください。特に証券会社でNISAを開設しているにも関わらず④が選ばれている場合は、かなりの確率で特別口座が存在します。

なぜならNISA開設の場合は①を選択すれば配当金への課税が非課税になるのですが、それにも関わらず、あえて④を選択して配当金に課税されているということは、被相続人でさえ気がつかないうちに、信託銀行に特別口座が開設されていることが原因になっていることがほとんどなのです(逆に言うと被相続人の証券口座で①が選択されている場合は特別口座の残高が無い証明になります)。

ちなみに当センターにご相談いただけるのであれば特別口座の残高調査や④の説明に加えて、④形式での受取期限が終わっている配当金の受取方法などもお伝えできるかと思いますので、お気軽にご相談くださいませ。

※監修 廣田証券 https://www.hirota-sec.co.jp