相続手続きや相続対策のサポートにおいては様々な知識が必要となります。誰が相続人になるのか、相続税の計算方法、相続のルールなど、相続にかかる基本的な情報については10年ほど前は情報の非対称性があり、お客様が知らないケースが多かったものの、今ではインターネットを活用して誰でも簡単に調べることができるため、私たちのように相続支援を行うプロは当然ながら知っておかなければならない情報となります。一方で、インターネットでも調べることが難しい内容や、お客様が気付かない視点を掘り下げて提案していくことは、AIが台頭し始めている中でも必要なスキルとなるでしょう。では、相続支援のプロが把握すべき知識とは何でしょうか。
相続コンサルタントに求められる4つのスキル
相続コンサルティングには、法務、税務、不動産、年金、保険、介護、葬儀など幅広い知識が必要となりますが、そのためには最低でもファイナンシャルプランナー3級程度の基礎知識は必須となります。その上で相続に関する知識を積み上げたいという方は、相続士、相続診断士、相続アドバイザー、終活カウンセラーなど相続に関する民間資格を取得することも一つの方法です。しかし、当然のことながらそれらの資格を取得したからといって、仕事ができるようになるわけではありません。
実際にご相談に来るお客様は、相続に必要な財産情報を最初から打ち明けてくれるわけではありませんから、相談されたお客様に質問することで開示していただいた僅かな情報から、全体像を把握することが重要となります。それには最低限身に付けておきたい4つの情報収集スキルがあります。
法務局関連資料を読み解くスキル
法務局で取得することができる登記簿謄本などの資料から情報を読み解くことができれば、地図や市町村の都市計画情報なども組み合わせることにより、お客様からヒアリングをせずともほとんどの情報を把握することができます。場所が特定できれば、路線価図等により土地評価額の概算金額も把握ができるようになります。
固定資産税資料を読み解くスキル
固定資産税資料は所有者しか知りえない情報なので、お客様から提供していただくことしかできませんが、この資料にも様々な情報が記載されています。また、法務局資料では得られない情報として「固定資産税評価額」があります。この額から相続税評価額も推定することができますし、相続手続きや対策の際にかかる登録免許税や不動産取得税の金額も推定することができます。
その他の資料を読み解くスキル
不動産以外でも以下の資料を読み解くスキルも必要となります。
・ねんきん定期便などの年金関連資料
・保険契約に関する書類
・税務申告書など
・源泉徴収票など
不動産などの財産価値の把握も必要ですが、これらの資料を読み解くことができれば、収支などのキャッシュフローバランスを把握することができます。特にアパートなどの収益物件を所有する場合、確定申告書の不動産収支を確認することにより、家賃収入、支出もより的確にできます。
相続コンサルタントは『身近な診療所』
相続コンサルタントの立場としては、できるだけ正確な情報を収集して、お客様に最適な提案をしてあげたいと考えるのが当然です。しかし、そのためには時間と費用もかかりますし、お客様によっては、実際にそこまで望んでいない場合もあります。
もし可能な限りの正確な情報を収集すると、財産評価にしても税理士による厳密な調査が必要ですし、費用も数十万円単位でかかります。
相続コンサルタントは、医者で喩えれば『身近な診療所』という立場です。相談者は地主や資産家のように自ら勉強されている方は少なく、不動産評価額を計算したことがない、財産の把握もしたことがないという方の方が多いはずです。そのため、まずは「概算を把握し」、「将来の姿を予測し」、「今なら何ができるか」ということを分かりやすく伝える姿勢を貫くことが大切だと感じています。
相続相談を受ける際は、相談された一部分だけにスポットを当てずに全体像を見て把握できるよう、相続に関わる周辺知識の習得やヒアリングを重ねることが重要です。相続相談の内容は多種多様に渡るため、依頼者の代わりに相手方と交渉するケースが発生したり、税金など法律上士業しかできない業務(独占業務)などもあります。そのため、相続コンサルタントは信頼できる士業や専門家と連携し、相談し合いながらお客様にとっての最適解を見つけていくことが求められます。
このコラムは弊社著書『相続コンサルティング入門』より一部引用しております。相続コンサルの業務に携わっている方、これから携わりたいとお考えの方は是非ご一読ください。