相続財産の中に上場株式が含まれている場合の手続きや評価方法については、以前に当コラムでご紹介させていただきました。それでは上場株式の「配当金」については、どのように取り扱えばよいでしょうか?
配当金について
原則として上場企業は株主からの出資を受ける見返りとして、1年間に儲けた利益の中から、その一部を株主に還元するということを行います。この株主へ還元する金銭のことを「配当金」といいます。一般的には1年に1~2回程度、配当金を支払う上場企業が多いです。
配当金が支払われるルール
次に配当金が支払われるルールについて説明します。まずは企業の「A:決算日」に株主である人を確定します。この日に株主だと認められた人に配当金は支払われます。
その後に「B:株主総会」が行われ、配当金の額が決定します。そしてAで決定された株主が、Bの株主総会で決定された配当金の額を「C:配当受取日」に受け取ることになります。(Aは配当基準日、Bは配当確定日などとも呼ばれます)
日本企業の場合の典型的な配当スケジュールとしては、3月末を決算日として株主を確定し、6月20日前後に株主総会を開いて配当額を確定し、6月末までに配当金が支払われるという感じです。もちろん企業によって決算日が異なるので、配当スケジュールも異なることになります。
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<典型的な配当スケジュール例>
_____A________________B________C___⇒
決算日 株主総会 配当受取日
(3月31日) (6月20日) (6月30日)
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相続時の配当金の取り扱いについて
では、相続が発生した場合の配当金の取扱いの話に戻りますが、基本的には被相続人が死亡した日が配当金の取扱いに大きな影響を与えます。
まずA以前に被相続人が死亡(例えば1月20日)している場合は、被相続人はそもそも配当金を受け取る資格がありません。Aの日に株主を確定するのですから、その日に死亡しているのであれば当然ですよね。つまり配当金は被相続人が残した相続財産ではなく、すでに相続人の固有財産ということになります(税務面では相続人の配当所得)。
次にAとBの間の期間に被相続人が死亡した場合ですが、この場合は決算日であるAの時点で被相続人が配当金を受け取ることが確定しているので、配当金は被相続人のものですから、相続財産ということになります。相続税評価額を計算する場合には「配当期待権(実務では見たことがありませんが・・・)」という名前になり、予想される配当額から所得税等を差し引いた金額を計上することになります。
次にBとCの間の期間に被相続人が死亡した場合ですが、この場合も被相続人が配当金を受け取ることが確定しているので、配当金は被相続人のものであり、つまりは相続財産ということになります。相続税評価額を計算する場合には「未収配当金」という名前になり、確定している配当額から所得税等を差し引いた金額を計上することになります。
最後にC以降に被相続人が死亡した場合ですが、Cの日に被相続人はすでに配当金を受け取っています。ですから配当金は「現預金」として被相続人の財産になっているはずですので、「現預金」としてすでに相続財産に含まれていることになります。
ただし・・・実際には配当金の相続手続きは結構大変な場合も多いです。なぜなら先に書いたように、理論上は相続人の財産となる場合であっても、実際には被相続人の名義で配当が支払われてくることが、しばしばあるからです。
さらに、被相続人が多くの種類の株式を保有していた場合、銘柄によってAの決算日が異なるため、相続手続き中に色々なタイミングで配当が支払われてくることになります。特に被相続人が配当金を「配当金領収証方式」で受領している場合などは、相続人が配当金を受け取るのにかなりの手間がかかる場合もあります。
もしもこの「配当金領収証方式」のケースに該当して、手続きが滞ってしまった場合は、当センターに一度ご相談いただければと思います(郵便局の店頭で配当金を受け取るように、指示された書類が送られてくるケース)。
ちなみに・・・配当金と同じ時期に送られてくることの多い「株主優待」についても経済的な利益があることから、「厳密」には配当に準じる形で相続人の財産になるか、被相続人の相続財産に含めて遺産分割協議をすることになると思われます(少額の場合が多いのであまり問題にはなりませんが・・・)。
最後に
いずれにしましても相続に関連する税で不明な点があれば、当センターのような相続を専門に取り扱う法人や、相続を得意分野とする税理士などへご相談されることをお勧めいたします。
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※「配当金領収証方式」という仕組みにつきましては、いずれ当コラムで詳しくご紹介したいと思います。
※監修 廣田証券 https://www.hirota-sec.co.jp