相続人が上場株式を相続する場合、被相続人が取引していた証券会社に、自分の口座を新しく開設しなければならないことがあります。その際には「口座開設申込書」という書類を記載しなければならないのですが、この書類には、株式投資未経験者にはわかりにくい専門用語が沢山使用されています。そこで今回はそれらの中から「NISA(ニーサ)」という用語を簡単にご紹介いたします。
NISAという言葉の生い立ち
まずはNISAという言葉の生い立ちですが「Nippon Individual Savings Account」の頭文字4つをつなげて生まれました。もともとはイギリスに「ISA(Individual Savings Account)」という証券投資に関する制度があり、それを参考にして作られた日本版のISA制度であることから「Nippon Individual Savings Account」、略してNISAと呼ばれるようになりました(なぜ「日本」という英語表現がJapanではなくNipponなのかは疑問ですが・・・)。
ちなみに日本語ではNISAのことを「少額上場株式等に係る配当所得および譲渡所得等の非課税措置」と呼ぶのだそうですが、実際にそう呼んでいる人に私は会ったことがありません。
NISAという制度の特徴
では次にNISAという制度の特徴ですが、まあ・・・一口で言えば、上場株式等の配当金と譲渡益に係る税金が非課税になるという制度です。
もう少し詳しく説明しますと、個人投資家が証券会社でNISA口座を開設して、その口座内で取得した金融商品については、その配当金や分配金と譲渡益が、取得した年から最長で5年間、非課税となる制度です。
同制度では、1年間における投資額の上限が120万円であり、5年連続使用可能となっていることから、1人あたり最大で120万円×5年連続使用=600万円分の上場株式等を投資できることになります。
そしてNISA制度が登場した後に、更に「ジュニアNISA」や「つみたてNISA」という新制度が生まれたことから、これらと区別するために、今では当初のNISAを「一般NISA」と呼ぶことにしています。
ただこの一般NISAという制度には、少し気を付けておきたい点もあります。
NISAのメリットデメリット
確かに一般NISA口座で購入した上場株式等を売却して「利益」が出た場合には、「税務上」は利益が出たと認識せず、譲渡益税は非課税となります。これが一般NISA制度最大のメリットです。
しかしその反面、一般NISA口座で購入した上場株式等を売却して、「損」が出てしまった場合には、「税務上」はその損失が認識されず、無いものとみなされてしまうのです。そしてこれが一般NISA制度最大のデメリットです。
基本的に株式投資における税務では、損をした売買と得をした売買を合算し(損益通算といいます)、純粋に利益となった部分にだけ譲渡益税がかかります。しかし一般NISAで損をした売買は、税務上は「損をした」と認めてくれないため、他の口座(一般口座や特定口座)で生じた譲渡益や配当と損益通算することはできませんし、当該損失の繰越控除も行うことができないという不利益も生じるのです。
ということは・・・一般NISA口座で購入する上場株式等が値下がりした状態で売却する場合は、見た目以上に損をしていることになるため、一般NISA口座で買い付ける場合は、絶対に値上がりする銘柄を選べなければ、通常以上に損をすることになります。
ただ実際にはそんなことは不可能なので、結果として一般NISA口座で購入した上場株式が値下がりしている間は、売却しにくいことになり、それが長期投資を促すという側面も備えているのです。そういう意味ではなかなか上手く考えられた制度ですね(2024年1月1日からは一般NISA制度に代わって「新NISA(仮称)」という制度が創設される予定です)。
最後に
実は一般NISAには上記の特徴のほか、相続という観点から見た場合には、絶対に知っておきたい大きな特徴があるのですが、その話は別の機会に当コラムでお伝えしたいと思います。上場有価証券の相続についてわからないことや、お悩みごとがございましたら、遠慮なく当センターまでご相談くださいませ。
※監修 廣田証券 https://www.hirota-sec.co.jp