上場株式の相続手続きを行っていると、たまに目にするのが「単元未満株」の存在です。基本的に上場株式は単元株(1単元=100株)で証券会社を通じて取引することになるのですが、上場企業が株式分割を行ったり、M&Aを行ったりしたことによって、1~99株といった単元未満株が発生することがあるのです。また最近はネット証券などで単元未満株自体を売買できるサービスも提供されています。
単元未満株は売却して現金化することも、また買い増しを行って単元株にすることも可能です。例えばA銘柄について43株の単元未満株を保有している場合、43株を売却して換金することも可能ですし、57株を買い増して100株といった単元株にすることも可能なのです(買い増しの取扱いを行っていない証券会社もあります)。
ただし単元株を単元未満株に分割することはできません。つまり相続財産にA銘柄が100株ある場合、それを2人の相続人で50株ずつ相続することは証券会社の手続き上不可能なのです。この場合、相続人の一方がA銘柄を相続するか、売却して金銭で2等分することになります。
ところで相続財産に上場株式の単元未満株が含まれている場合、注意する点があります。それは、一口に単元未満株と言っても、2通りのタイプがあるという点であり、1つ目は証券会社で保管されている単元未満株、そして2つ目は信託銀行で保管されている単元未満株です。
前者の「証券会社で保管されている単元未満株」の場合は、証券会社から郵送されてくる残高明細書に、単元株と一緒に掲載されているため、相続人が被相続人の取引していた証券会社が分かっている場合には、相続手続きから漏れることはありません。
しかし後者の「信託銀行で保管されている単元未満株」の場合は、年に1回もしくは2回程度しか単元未満株の存在を示す書類を送ってきません。しかも証券会社が預かり銘柄を一覧にして残高明細を送ってくるのに対して、信託銀行は1銘柄ごとにバラバラに書類を郵送してくるため、多数の銘柄を保有していた被相続人の場合は、大量の郵便物に単元未満株の書類が紛れてしまい、相続人が単元未満株の存在を発見する事が結構難しい場合があるのです。
そうなると相続人は相続財産としての信託銀行の単元未満株の存在を見過ごしてしまいやすくなります。また相続手続きをサポートする士業の方などでも、相続人の認識が薄いことから、相続財産のヒアリングから信託銀行の単元未満株が漏れてしまうこともしばしばです。
ただこれは、信託銀行の業務を考えれば仕方のないことです。なぜなら信託銀行から見れば、上場会社がお客様であり、会社ごとに契約して配当事務などを取り扱って手数料を得ているだけであるため、証券会社のように「株主ごとに自行でお預かりしている銘柄一覧リスト」を発送する動機があまりないからです(証券会社は株主がお客様であるため、保有銘柄ごとに一覧にして、財産が確実に保管されていることを知らせるという動機がある)。
いずれにしましても、信託銀行にある単元未満株は、取引なさっている証券会社に移管しておくか、買い取り請求をしておく方が無難だと思います。また、そもそも被相続人の相続財産に、信託銀行預りの単元未満株が存在しているのかどうか分からない、などといった場合は、よろしければ当センターにご相談していただけたら、お力になれると思います。
※監修 廣田証券 https://www.hirota-sec.co.jp